NHKが制作放送したドラマ「日本のいちばん長い夏」。

高度経済成長の気運に乗り、翌年には東京オリンピックを控えた昭和38年8月。当時文藝春秋の編集長だった半籐 一利さんが企画し、実施された終戦を語る座談会。内閣の役員、外務省官僚、陸・海軍将校、兵卒、沖縄に召集された従軍看護婦、監獄に収容されていた共産主義犯などなど28名による座談会の再現ドラマ。

再現と、半籐さんの述懐、各役を演じた出演者自身の終戦のエピソードなどが交差しながらの番組。

半籐さんがこの座談会を企画した背景には、ポツダム宣言受託に至るまでに何があったのかを知るためにインタビューをしても、語らない人、語っても誇張混じりの自慢話をする人が多く、昭和20年夏に何が起こっていたのか?を残したかったため、のようである。

ポツダム宣言が7月27日に送り付けられた時。
中枢は中立条約を結んでいたソビエトを仲介して終戦に持ち込むことを画策していた。そこに送りつけられた無条件降伏を迫る連合国の宣言。
これ以上の戦争継続は物資的に無理と判断しつつも、メディアや世論、さらには陸軍の論調を勘案するとなかなか内閣としても受託を公にし辛い。
そこで内閣の役員は新聞社にそれとなく聞いて欲しいと呼びかける。
変な出来芝居で行われたインタビュー。
時の鈴木首相はポツダム宣言を「重要視しない」と2度3度と受け応える。
取材した記者も世論などへの配慮からギリギリのニュアンスとして「黙殺」という言葉を見出しに使う。
それを英米の新聞は「reject(拒否)」と報道する。

今村 均 役として出演された富野 由悠季さんは
「何にも考えていない大人が戦争をしていたのか」とあきれた感想を述べたように、座談会のやり取りを見ると本当に情けない有り様。

また村上 兵衛 役を演じた市川 森一さんは、演ずるにあたり村上さんの著書「国破レテ」を読まれた感想として、
「当時も正しいことをいっている軍人もいた。
 どんな時代も正しいことを言う人は少数派。危ないのはメディアと大衆であるように思う。」と述べていた。

今の政権の短命さ、財政が危機的状態にありながら消費税増税を議論することが政権の命取りにさえなりかねない状態は、メディアの片言隻語な論調による影響も大きいのではないかと思う。

語りたくなかった当事者たち。
聞かぬうちに、あれよあれよと戦後の高度経済成長を謳歌できた次世代たち。
歴史の継承は戦後に大きなひとつの断裂があるのではないだろうか?

「何が起きていたのか?」
その事実をある一面からだけ観るのではなく、いろんな視点から同時に観る。この方法はバランスという、とても大切な要素を含んだ歴史認識が可能なのではないだろうか?

その意味において、戦争の証言ドキュメントよりも、実に意味深く、いろんなことを知ったドラマだったように思う。